あいちの花き生産

花き園芸の歴史

○ 昭和初期の花き

愛知県は、江戸時代から園芸が盛んな地域であり、その文化的背景のもと、花き栽培は各地で行われていた。  営利栽培が始められたのは大正から昭和初期頃である。昭和4年(1929)当時の特産品としては、名古屋ちりめん葉ボタンが名古屋市中川区高畑町100余戸の全農家で生産されていた。

○ 昭和30,40年代〜産地・市場の整備が進む〜

昭和34年4月に愛知県の花き生産者組織である愛知県花卉園芸組合連合会が発足した。  昭和30年代は、温風暖房機の開発普及や鉢物専門市場の設立で、施設鉢物栽培が発展した。また、品評会への参加や新たな開催により、花き生産振興が図られた。  昭和35年には花き産出額6億円で全国4位であったが、昭和37年には、10億円を超え、全国一となった。

○ 昭和50年代〜経営の発展と技術の進歩〜  

切り花は、きくやカーネーションにスプレー咲き品種が登場し人気を得て、生産拡大につながった。ばらではロックウール栽培導入による大幅な省力化が進んだ。  洋らんでは、組織培養技術が普及し大量生産が可能となり、ギフト需要に対応して生産が急速に拡大した。  また、昭和54年(1979)頃に洋らんの山上げ栽培技術が定着し、年末の需要期に出荷できるようになり、さらに生産が促進された。  観葉植物はグリーンインテリアとしてサマーギフト等に利用されるようになり、ネーミングを工夫した「幸福の木」(ドラセナ・マッサンゲアナ)「青年の木」(ユッカ)等やハイドロカルチャーブームなどが起きた。

○ 昭和60年代以降〜花のPRによる生産振興と消費拡大〜  

昭和60年代後半には日本経済は、好景気時代に入っていた。その象徴のように高価な花が売れる時代となった。
 平成2年には、国際花と緑の博覧会(花の万博)が、大阪市鶴見区の鶴見緑地で開催され、総入場者数は2,312万人と特別博覧会史上最高を記録した。この博覧会をきっかけに、ガーデニングブームが起こり、園芸の世界は、インドアからアウトドアへ幅が広がっていった。
 平成3年のバブル経済崩壊以降、贈答用、イベント催事用の花の需要が減退し、徐々に家庭需要の割合が増加していった。生産者も、鉢や仕立て方を工夫し個性あふれるオリジナル性の高い商品づくりやオリジナル品種の育成などに取り組み、消費の多様化に対応した。
 平成8年に愛知県内の鉢物専門市場3社が中心となって、豊明市に花き大型市場を開設し、機械せりシステムなど近代的な流通システムを導入した。
 愛知県では、あいちの花きのPRを目的としたフラワードームの開催や、外国の国際園芸博覧会への出展等を行ってきた。愛知万博でも、「花の惑星」としてディスプレイ出展を行い、万博会場を盛り上げるとともに、あいちの花をアピールした。  このように、本県花き園芸の継続的な発展は、日本経済の発展と生活文化の向上に伴い、花の需要が伸びたことが背景にある。しかし、本県では特に@温暖な気候A大消費地への利便性B花き園芸の伝統と高い技術力C優れたリーダーと生産者のたゆまぬ努力D生産者と関係機関の連携協力体制によるものである。
 あいちの花き産出額は昭和49年に100億円、平成2年に500億円を超え、日本一を継続しつつ、平成8年に700億円を越えた。

花き園芸の現況

○ 51年間全国一の花き生産額

 平成24年の本県の花き園芸は、作付面積2,007ha、産出額は559億円で、昭和37年から全国一の花き生産県として確固たる地位を築き、全国産出額3,451億円の16.2%を占める花き生産県として発展を続けている。

○ 主要7品目で全国一の産出額

 主要品目のうち、きく、ばら、洋らん、花木類、観葉植物、花壇苗は産出額全国一である。他に、鉢物のハイビスカス、ポインセチアも全国一である。   

○ 本県花きは施設栽培が95%

花き作付面積のうち、ビニルハウスやガラス温室などの施設栽培延べ面積が95%を占め、これが本県花きの特徴である。  特に、きく、ばら、カーネーション、観葉植物、鉢花、洋らんは施設栽培が多い。

○ 個性的な露地生産

 本県の露地栽培は主に西尾市の和物盆栽、山間地域の小ぎく、枝物等があり、地域の特産花きとなっている。

○ 花き経営の専業化

平成24年において、花き収入が農業収入の8割を越える農家戸数は2,385戸で、全花き農家戸数3,449戸の69%を占め、花き経営は専業化が進んだ。

主要花きの状況

 切り花では、きく、カーネーション、ばら及び洋切り花、鉢物では観葉植物、洋らん、鉢花、和物盆栽、花壇苗が本県の主要花きであり、これらの品目で本県産出額のおよそ9割を占めている。 

○ きく

 全国の31%にあたる202億円が県内で産出されており、全国一の産地である。大中輪ぎくは田原市を主に、稲沢市、西尾市等で栽培され、スプレーぎくは田原市、豊川市が主である。 栽培品種は、秋ぎくは神馬と精興の誠、夏秋ぎくは、精の一世と岩の白扇が主である。スプレーぎくは、多種多様な 品種を栽培している。

○ カーネーション

 全国2位の産出額をもつカーネーションは、西尾市、田原市、碧南市等で生産があり、全国屈指の生産県としての地位を維持している。

○ ばら

 平成に入り県内各地で生産拡大してきた。  主な産地は豊川市、田原市、西尾市、豊橋市であり、産出額は約25億円で、全国一の産地である。

○ 洋切り花

洋切り花は、デルフィニウム、アルストロメリア、グロリオサ、ガーベラ、スイートピー等の一年性、宿根性及び球根切り花がある。産出額は約45億円で、近年急速に伸びている種類である。主な産地は、田原市、豊橋市等である。

○ 観葉植物

 田原市、岡崎市、西尾市、豊橋市、南知多町が県内の主要な産地であるが、県内各地に産地形成されている。産出額は約40億円で昭和50年代から連続して、全国一の産地である。

○ 鉢花

 県下全域に産地があり、とくに田原市の生産が多い。シクラメンを始め、あじさい、ポインセチアなど種類、品種も多様化が進み、オリジナル品種の育成や、仕立て方など商品開発が盛んに行われている。

○ 洋らん

 豊橋市、西尾市、東海市、南知多町、西尾市、東浦町などが県内の主産地である。種類別でみると、ファレノプシス、シンビジウム、デンドロビウムを中心に、年々、その他の種類や品種の多様化が進んでいる。

○ 和物

 西尾市を中心に栽培されている。産出額は2億7百万円で、全国有数の産出である。

○ 花壇苗

 一宮市、春日井市で多く栽培されており、大規模経営が多い。産出額は23億円である。

組織活動

 県域の生産者組織である愛知県花き温室園芸組合連合会には、本県花きの主要品目であるきく、スプレーマム、カーネーション、ばら、鉢物、洋らん及び和物の7部会があり、各部会の活発な研究及び消費拡大活動と生産農家の努力によって、花き経営安定に努めている。

花き共販体制ついて

地域において、共販化されている品目は、輪ぎく、スプレーぎく、カーネーション、ばらなどの主要品目をはじめ、カラー、しょうぶ、スイートピー、リシアンサス、グロリオサ、アルストロメリア、カスミソウ、スターチス、ガーベラ、ストック、デルフィニウム、ユリなど20品目以上に及んでおり、県下全域にそれぞれの地域性を活かした系統の共販組織が活動を展開している。  一方、観葉植物、鉢花、洋らん、和物等の鉢物については、個々が特色ある商品生産をしているため、共同輸送または、個別に輸送販売している。  主要な花きを中心に産地が大型化しているため、現在では切花の約8割、鉢物の約7割が県外へ出荷されている。  原油高や環境対策により生産及び輸送コストが高騰しており、各産地で効率的輸送にむけての体制見直しが必要になってきている。

燃油高騰・環境対策

 施設園芸の暖房用に使われるA重油の農家売り渡し価格は、平成21年12月に64円であったものが、平成26年4月には98円になり、生産コストの上昇が施設花き経営に大きく影響を与えている。  そこで、生産コストを抑え、かつ環境への配慮も考えた、省エネルギー設備の導入が進んでいる。 また、きくの電照栽培や鉢物の補光等を目的に、LEDの導入も進められており、県内では、すでに導入している法人等がある。  LEDの活用技術開発については、県農業総合試験場で現在研究が進められている。

愛知県におけるオリジナル品種の開発

 本県花きの振興のために、県農業総合試験場は、県花き連と連携をとりながら本県独自のオリジナル品種の育成を進めている。

花いっぱい県民運動

 平成25年度から、愛知県と花き関係団体、商工関係団体が協力して「花の王国あいち県民運動実行委員会」を立ち上げ、県民の皆さんに暮らしの中に花を取り入れていただくことを目的に、愛知の花のPRや花のある生活空間の提案などの「花いっぱい県民運動」に取り組んでいる。
 月替わりで「今月のあいちの花」を設定し、県庁や主要施設等でPRを行っているほか、花に込めたメッセージの募集や花育教室を実施している。
 花に込めたメッセージの募集については、県民から花を贈るときに添える、すてきなメッセージを募集し、そのメッセージと花を贈る取り組みである。  小中学校の生徒からの応募も多く、花について考えてもらう良い機会になっている。
  花育については、小学生を対象に愛知の花に触れて、飾って、学ぶ花育教室を推進している。  県下各地域でも、生産者や農協や行政が協力しながら、子供向けの花育教室が行われている。
 今後とも、あいちの花をより多くの県民に身近に感じてもらうため、そして、子供の頃から花に触れることで優しい心を育み、花を身近におく習慣をつけてもらうために、花育活動を推進する。

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